もう、イヤだと思った。
何で僕だけがこんな思いをしなくちゃならないんだと思った。
どうして僕なんだ。
僕はそんな事、望んでいない。
僕は一番になりたいんでも、人類を救うヒーローになりたい訳でもないんだ。
ただ、父さんに言われたから、周りの人に言われたから・・・・・・
だから乗ってるんだけど?
言ったよね?僕はもう、エヴァになんて乗りたくないんだって。
ねぇ、もう放っておいてくれないかな。
サードインパクト?
だから、何?
人類が滅亡する?
別にいいじゃん。勝手にすれば。
死ぬ?
僕は構わない。
どっちかと言うと、死にたいね。
だって、エヴァに乗る位なら、死んだ方がマシなんだよ。知らなかった?
アスカ?
知らないよ。関係無い。
だって、僕に助けてもらいたくなんて無いんでしょ?
本人、そう言ってたよ。
第一、どうしてアンタに許してもらわないといけないんだよ。
放っておいて。
僕は、誰とも関わりあいたくないんだ。
一人になりたいんだ。
そう思ってしまったあの時、あの瞬間。
何かが弾けたあの瞬間。
気が付けば僕は、紅い世界にいた。
sea of crimson
赤い海は、人々が溶け合った、"原始の海”らしい。
さっき、赤い海で拾った、誰かの知識。
僕は泳げないから、海に入れば死ねるかもしれない。
そう思って、一歩を踏み出した。
その途端に入ってくる、誰かの思考、感情、情念、
慌てて海から飛び出した。
・・・・・・・誰もいない。
ううん、違うな。アスカは居た。
でも、知らない。関わりたくない。
だって、アスカ、怖いしんだもの。
すぐ怒鳴るし、怒るし、叩くし。
僕は、こんな世界で生きたくないよ。
ねぇ・・・・・誰か、いないの?
父さん。母さん。リツコさん。マヤさん。日向さん。青葉さん。
・・・・・・綾波。
カヲル君。
・・・・・・・・・。
ごめん、カヲル君。ごめんなさい。
君は僕に未来を託してくれたけど・・・・・・・こんな未来になっちゃったよ。
ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。
でもね・・・・・でも・・・・・
言い訳をさせてもらえるんだったら、
君を殺してしまった時に僕の心も壊れてしまったんだ。
僕の事、大好きだって言ってくれた君を、
親友だって思った君を、
殺さなければいけなかった僕の気持ち、解ってくれるかな?
本当にイヤだったんだよ。
本当に悲しかったんだよ。
神様・・・・・・・・
あの時は、こんな選択をしてしまったけど、本当は違うんだ。
だから、もう一度、チャンスをください。
今度はちゃんと、願うから。
ちゃんと、願えるから。
僕は赤い海に入る。
一歩、踏み出すごとに、色んなものが入ってくる。
怖いし、気持ち悪かったけど、どうでもイイや。
泳げないから、死ねるよね?
それがダメでも、狂ってしまえるよね?
お願いです、神様。
もう一度だけチャンスをください。
それがダメなら、僕を死なせてください。
僕が波にさらわれたその瞬間、再び何かが弾けた様な気がした。
2010.06.06