epilogue

「ねぇ、母さん。」

 

僕はその響きに涙が出そうだった。

 

「シンジ、よく頑張ったわね。」]

 

そう言って、母さんに頭をなでられた。

くすぐったいけど、うれしかった。

 

「でも・・・・・・・・・」

 

ここは、赤い世界。

海も、空も、赤い。

 

「いいの。あなたは頑張ったんだから。」

 

母さんの言葉に涙が出た。

 

 

「私たちの計画に巻き込んじゃってごめんなさい。」

 

僕は母さんの腕の中で首を振った。

 

「あなたを独りにしてごめんなさい。」

 

僕は母さんの腕の中で首を振る。

 

・・・・・・いいんだ、こうして逢えたから。

 

 

最後の最後に逢えたから。

 

 

 

 

「シンジ・・・・」

 

僕は顔を上げた。

 

「還りましょう。」

 

「・・・・・・え?」

 

「還って、やり直しましょう。」

 

「・・・・・・・え?」

 

でも、戦いたくなんてないんだ。もう、疲れたんだ。

 

「ねぁ・・・・・シンジ。」

 

母さんは優しく笑う。

 

「今度は私も一緒よ。」

 

「でも・・・・・・・・・・」

 

「大丈夫。大丈夫だから・・・・・・・」

 

「だって・・・・・」

 

「一緒に還りましょう。 みんなで一緒に・・・・・」

 

 

 

 

あぁ・・・夢か・・・・・そう思った。

 

 

 

でも、ここも夢の中?

 

 

 

 

・・・・・・・違う、エヴァの中だ。

 

 

 

「ねぇ・・・母さんも還ろう。」

僕は母さんに声をかけた。赤い海で母さんに言われたように。

 

だって、たったひとり、この中では寂しすぎる。

 

「いいえ。私は還らない。」

 

そんな・・・・・・・・・・・

 

「私はここに残る。このままここで眠るの。」

 

でも・・・・・・・・・

 

「これが私に出来る事よ。あなたにしてあげられる、最後の優しさ。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・あなたがくれた力を使うわね。」

 

・・・・・・・・ありがとう、シンジ。ずっと、ずっと、ここであなたを・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

目が覚めたのはエントリープラグの中だった。

 

「綾波・・・・・・・・」

 

僕は綾波のほほに触れた。

 

    ・・・・・生きてる・・・・・・・・

 

僕は眠る綾波を抱きしめた。

 


    ・・・・・疲れた・・・・・・・

 


僕はそのまま。目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

~終わりの始まり~

  君のために出来るコト
          

 

 

 

 

 

 

 


「あなた・・・・・・・」

ユイはすがるような瞳でゲンドウを見た。

「大丈夫だ。シンジの事は、エヴァが護ってくれる。」

「あなた・・・・・・」

ユイがゲンドウを見上げる。

「違うのか?」

「違わない・・・・・」

ユイは首を振った。

 

 

 

 

 

 

「エントリープラグに生命反応、確認できました。」

モニターに初号機のプラグ内が映し出された。

エントリープラグに座ったシンジが、ひざの上に座るレイを抱きしめていた。

「・・・・・・・サードチルドレンの心音が・・・・・・・」

マヤは泣き出していた。

「止まってはいないんでしょ!?」

リツコの問いに、マヤはうなずいた。

「教護班、まわして!!!」

リツコの指示に、オペレーターは忙しく末端を叩く。

「大丈夫。必ず助けるから!」

リツコは自分に言い聞かせるかのように言った。

 

 

 

 

 

 

 

アスカは発令所を飛び出した。

 

    シンジ、死なないで!!

 

アスカは、ゲージに向かいながら心の中で叫び続けた。

 

アタシはアンタにまだ、お礼を言ってない。ありがとう・・・って言ってない。

アンタはファーストを選んだけど・・・・・

それでも、アタシはアンタに生きてて欲しい。

アンタはアタシが幸せになるのを見届ける義務があんのよ。

アンタに寄りかからないでも生きていけるって、見届けてもらわなくちゃいけないの!

だから、アンタはここで、笑っていなければいけないの!!!

 

 

 

 

 

 

 

 アオイは4号機のゲージに向かった。

初号機にはユイとゲンドウが向かっていたので、大丈夫であろうと判断した・・・・・と言うより、誰にも出迎えられなければ、カヲルが可哀想だと思ったのだった。

ゲージに着くと、すでにプラグは排出されていた。

しかし、カヲルの気配はしない。

勝手知ったる何とやらで、アオイはプラグを覗き込む。

そこには、両手で顔を覆い、うつむくカヲルがいた。

 

 

    ・・・・・・・泣いているの?

 


アオイの気配にカヲルが顔を上げた。

「ゴメン・・・・・・・」

そう言ってカヲルは微笑った。

「何を・・・・泣いているの?」

「泣いてなんかいないよ・・・・・・」

「・・・・・・でも・・・・・・泣いてる・・・・・・」

しばしの沈黙の後、カヲルが口を開いた。

「シンジ君に・・・・・・酷い事をしたな・・・・・って」

「どうして?」

「前にね・・・・僕は彼に酷い事をお願いしたんだ。

 その時は気付かなかったんだ。でも・・・・・さっき、気付いた。」

「・・・・・・・・・」

「でも・・・・シンジ君は赦してくれた・・・・」

儚く微笑うカヲルが消えてしまいそうで・・・・・・・

「僕には何を言っているのか解らないけど・・・・・・」

アオイは微笑う。

「お兄ちゃんが許してくれてんだったら、いいんじゃないの?」

「でも・・・・・・・」

「いいと思うよ。僕が言うんだから、確かだよ。」

そして、アオイは大切な事を言っていない事を思い出した。

「お帰りなさい。お疲れ様でした。」

そう言って、手を差し出した。

「さ、みんなの所へ行こう。」

 

 

 

 

 

「加持さん・・・・・・・・」

カヲルがエントリープラグから出ると、加持が立っていた。

「お疲れ。よく戻ってきてくれた。」

加持は笑顔でそう言った。続けて、疑問に思っていた事を聞くことにした。

「ひとつ聞いていいか?」

「僕に答えられる事だったら・・・・・」

今ひとつ自由にならない右足を意識しながらカヲルは答えた。

「四号機は、君の力なんだろ?」

「え?」

「いや・・・・答えたくないのならいいんだ。ただ・・・そんな気がしてね。」

 

沈黙が支配する。

 

ふっとカヲルが微笑う。とても儚なげな微笑いだった。


「いいですよ・・・・・・・・ アオイも聞いて。」

カヲルは意を決したようだった。

「僕は最後のシ者、自由意志を司る使徒、ダブリス。」

「!!!!」

アオイの目は驚きで見開かれたが、加持はいたって冷静だった。

「そうか・・・・・・・・」

加持は優しく笑った。

「ユイさんが、最後の使徒の存在にこだわった訳だ・・・・」

「僕を・・・・・殺さないんですか?」

カヲルのすがるような視線を加持は受け止めた。

「どうして?」

「だって、僕は・・・・・」

「人類を救ったチルドレンを、何故殺さなくてはいけないんだ?」

「でも・・・・・・・・」

「君は人間だ。」

「ありがとう・・・・ございます・・・・・」

カヲルの目から涙が一滴こぼれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲージを出ると、笑顔で迎えるリツコが待っていた。

「カヲちゃん、お帰りなさい。」

リツコは右足を引きずるように歩くカヲルを見て、一瞬だけ、眉間にしわがよった。

しかし、相変わらずにつながれた手には目を細めたけれど。

「リツコさん・・・・・」

「お帰りなさい、カヲちゃん。」

そう言って微笑むリツコに

「ただいま帰りました。リツコさん。」

と微笑った。

「加持君、私の大切な弟を泣かせたでしょ!」

そう言って、リツコは加持を軽くにらむ。

「見てたんだ・・・・・」

「そりゃあね・・・・・」

リツコはカヲルとアオイに視線を向けた。

「シンジ君は無事よ。生きているわ。レイもね。」

その言葉を聞いて安心したのか、カヲルの体から力が抜け、崩れ落ちそうになる。

それを加持は腕をつかんで支えた。

「そうだよな。疲れてない訳が無い。」

そう言うと、加持はカヲルを抱き上げた。

「か・・・加持さん!」

「大丈夫、葛城よりは軽いさ。」

「加持君、ミサトに殺されても知らないわよ?」

リツコが茶化した。

「行き先は治療室?」

「そうね、お願いできるかしら?」

「了解しました。」

その会話を聞きながら、カヲルは意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

「リツコさんは知ってたんですか?」

少し離れた所で、アオイが問う。

「どうかしらね。」

リツコはクスクスと笑った。

「・・・・でも、どうして?」

「・・・・・そんな気が、したんです。」

「カヲちゃんはカヲちゃんよ?」

「・・・・・そうですね。」

ふたりは笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

目が覚めたら、アオイがいた。女の子のままだった。

指先ですら動かしたくないほどの疲労感。

それでも腕を伸ばしてアオイの手をつかんだ。

「お・・にいちゃん・・・・・・・」

アオイの目から涙がこぼれた。

 

    思考がまとまらない・・・・・・・・

 

「みんな無事だよ。綾波もカヲル君も今は、休んでる。」

 

    ・・・・・・・よかった・・・・・・・

 

「あのね、お兄ちゃん。」

アオイは僕の顔を覗き込んだ。

「僕はね、僕自身が女の子でいる事を選んだんだ。

  みんなが僕に優しくしてくれる。僕は、今、幸せだから!!」

しゃべろうと息を吸ったら、胸に激痛が走った。

「しゃべらないで!!話さなくていいから!」

 

    ゴメン・・・・・・・

    そして、ありがとう。

 

「どうしたら肺に穴なんて開くのさ!」

アオイはかなり怒っているようだった。

 

    え~・・・・・っと、それはね・・・・

 

    ロンギヌスの槍を胸に刺したから?

 

    シンクロ率、上がってたから?

 

「母さんも綾波もカヲル君も泣いてたよ。」

ハイ。ごめんなさい。

「もう心配させないでよ!!」

ぼろぼろと涙をこぼすアオイを見ながら、僕は眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 


カヲル君と僕は、週に3回、ネルフに通っている。

出来上がった《蒼~SOU~》のチェックと、エヴァの解明な主な仕事だ。

母さんは『蒼』を商業ベースに乗せる気らしい。曰く

「MAGIは無理だけど、こっちなら、値段もそれなりになるでしょ?」

だそうだ。

今後は、税金だけに頼らずに、運営されるらしい。

特許の使用料だとか、エヴァのオーバーテクノロジーだとか。

(実は、ネルフのロゴマークの入ったグッズは売り出されているんだ)

 

『蒼~SOU~』が売れたら、僕たちにもそれなりのギャランティが入るらしい。

そのお金が入ったら、みんなで旅行にでも行こうかな。修学旅行にはいけなかったし・・・・・・

と、思ったら、僕らは一応、受験生だった・・・・・・・

 

 

 

 

 

そして、父さんと母さんは何やら色々と暗躍している。

最後の使徒については、しらを切り通してるらしいし。

 

 

 

 

加持さんは、作戦課の臨時責任者と政府の監査官をあっさりと辞めた。

加持さん曰く「性に合わない。」のだそうだ。

近々、ミサトさんと式を挙げるそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

冬月副指令はネルフの技術を教えるための大学を造ることになったらしく、そっちで忙しい。

「君達が大学生になる頃には完成させてるよ。」と言われた。

ってコトは、僕たちが入学する事が前提って事?

ま、ここから離れられるとは思ってなかったからいいんだけど。

 

 

 

 

綾波とカヲル君と僕は、リツコさんの指示で、《蒼~SOU~》に関するいくつかのレポートを仕上げた。

今はエヴァのATフィールドについての実験とレポート。

綾波とアスカは早々に逃げ出していた。

アスカ曰く「だって、アタシのエヴァ、ないんだもの。」だそうだ。

 

弐号機は最終戦で壊れたままなのだ。

補修にはかなりの額がかかる為、現在は補修を見合わせているのが現状だったりする。

 

初号機と四号機があれば大丈夫って事なんだろう。

 

 

 

 

 


そんな中、僕たちチルドレンが国連に招待された。

僕の起こしたサードインパクトの所為なのか、トウジの足はすっかり治ってて・・・・・僕は未だに足を引きずってるっていうのに!

 

 

当日、僕らは正装で指定された場所へ向かった。

 

実を言うと、トウジとアオイは辞退したんだ。

でも、トウジはフォースチルドレンに違いは無いんだし、エヴァに乗ったのは事実なんだからと言うと納得したようだった。
(でも、僕は、ディナーに惹かれたんじゃないかと思うんだけど・・・・)

 

 

一方で、アオイは頑なに拒否をした。

「私はエヴァに乗ってはいない」と。

 

それは、アオイが『碇アオイ』として生きて行く覚悟なんじゃないかと思った。

 

ゴメンね、アオイ。

本当なら君が『碇シンジ』としてこの場にいるべきなのに・・・・・・

 

 

「ママ!!なんでアオイまで行けなくちゃいけないの!?」

かなりご立腹で母さんに絡むアオイ。

「それは・・・・・・国連の事務総長がね、ゲンドウさんの娘に興味があったから・・・・」

「はぁあぁあぁ!!!」

「だって・・・・本当よ?」

これは、後日、事実だったことがわかるんだけど・・・・・

 

 

 

 

来るんじゃなかった・・・・・・

 

本日何度目かのため息がもれた。

 

今回は母さんが張り切っちゃって、みんなのコーディネートをしたんだけど、僕たちは普通に黒のタキシードで、アスカは深紅のドレス、綾波は白地にブルーのアクセントが入ったドレスで、アオイは淡いピンク。

 

でも、僕にはタキシードなんて似合わない。

 

えらく張り切った母さんに着せられたんだけど・・・・・・身長が足りない・・・・

 

カヲル君もトウジも、同世代と比べても、身長高いから似合ってるんだけどっ。

 

「碇君?」

「・・・・・・・なんでもない・・・・・・」

 


案内されたのは、かなり豪華にしつらえられたホールだった。

広いホールに、数人の大人。

「お招きありがとうございました。」

代表してアスカが挨拶をした。

僕たちはお互いに挨拶とすると席に案内された。

 

 

穏やかに会食が始まった。

 

僕たちはそこで、感謝の言葉と、いくつかの約束とお願いをされた。

 

チルドレンは、彼らが成人して、自ら名乗り出ない限り秘匿とする。

僕たちの安全は出来うる限りで保障する。

 

など、僕たちの権利を優先してくれるものだった。

 

これに対しては、素直に感謝の言葉を言うことが出来た。

 

 

そして、後日、お願いされていた写真撮影。

 

アオイを除くチルドレン5人はプラグスーツに着替えていた。

こうして5人でプラグスーツを着るなんて最初で最後だろう。

綾波から順番に並んで、写真に写る。


綾波とカヲル君は本人の希望で髪の色が変えられた写真は、僕たちの後姿。

 

そして、その写真は、国連と、新しく作られたネルフのホームページに飾られることになっていた。

 

 

 

    初: 2009.07.14 (オヤジの青春)

2009.12.13 改定


あとがき      と言う名のタワゴト

ラストの3つは、ほとんど手直ししておりません。

なんか、手直しできないの。

 

で・・・・・・・、改めて自分で書いたあとがきを読んだんですか・・・・

ハイテンションだ!!!

もう、笑えるくらいに(自爆)

興味のある方は、NOVRLⅡでリンクしてあります、オヤジの青春の方に行ってみて下さい。

 

さ、これで、心置きなく、あっちを!!!

・・・・・・・・・と思ったら、大掃除しなくちゃ ┓( ̄∇ ̄;)┏ 

   

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