00 プロローグ

見渡す限りの赤い世界。

空も、海も、赤かった。


一緒に来た赤いプラグスーツに身を包んだ女の子は、ずいぶん前にLCLになってしまった。

 

 


何も無い・・・・・・・

 

彼はそう思った。

 


「血・・・・・・・みたいだな。」

口には出してみたものの、答えてくれる人が居ないのも、彼は、知っていた。

 


波打ち際にぼんやりとたたずむ。

 

どれ位の時間がたったのだろう?


ほんの10分だったかもしれないし、1日や2日経っていたのかもしれない。

 

眠くもならず、空腹も感じず、ましてや喉の渇きすら感じない。


あるのは、絶対的な孤独だけだった。

 

 

 

 

僕はどうしたかったのだろう?

 

 

 


彼は考える。

 

父さんに呼ばれて、エヴァに乗って・・・・・・・

段々と追い詰められた自分。

壊れていく、アスカ。

自爆した綾波。

そして・・・・・・・・・・・、カヲル君を殺した。

 

彼は頭を振った。


「違う!!!違うんだ!!!」

 

彼は大声で叫んだ。

「僕は・・・・僕はみんなと一緒に暮らしたかったんだ」

彼の声を聞くものはいない。

「僕は、僕を必要としてくれている人の期待に応えたかったんだ・・・・」

「いや・・・・・・違う・・・・・・・

  本当は・・・・

 父さんがいて母さんがいて・・・・・そんな・・・・・家族と暮らしたかったんだ」

搾り出すような声だった。

彼は考えた。

父の事、アスカの事、ミサトの事、トウジやケンスケの事、ネルフのメンバーの事、エヴァの事。

カヲルの事とカヲルを殺してしまった自分の事。

 

 

 

そして・・・・・・・綾波レイの事。

 

 

 


何故だか彼はスコンと納得した。

 

「そうか。僕は綾波の事が好きだったんだ・・・・・」

 

だから、自爆の時にショックを受けたんだ。

だから、3人目と聞いてショックだったんだ。

そう、僕の知っている・・・・いや、僕の好きな綾波を冒瀆された気がしたんだ。

 

でも・・・・・

2人目も3人目も関係ない。

綾波は綾波。

そんな簡単な事も解らずに綾波を傷つけてしまったんだ。

ふっと彼は笑った。

 

「許してもらえないな」

 

そう言って彼は再び思考の中に戻っていった。

 

そして、気付く。


赤い海からの来るものに。


溶け合ってしまった人々の意識・・・・・・・

 

「今なら、真実が解かるかもしれない・・・・・」


彼は一歩を踏み出した。

LCLの海の中に。

 


今なら真実が解かるかもしれない。

 

 

 

彼は再び、思考の波に身を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

彼がふと顔を上げた。


いつの間にか、波打ち際でたたずんでいたのだった。

 

天から一筋の光。

 

 

 


・・・・・・・何を願うの?・・・・・・・・

 

 

 

「僕は父さんと母さんと家族で暮らしたい。

 アスカやミサトさんやリツコさん、ネルフのみんなと一緒にいたい!

 そして・・・・・」

 

一瞬の躊躇の後、躊躇う事無く言葉を続ける。

 

「許してもらえるのなら、カヲルくんや綾波と一緒に生きて行きたい!」

 


・・・・・・・それが・・・あなたの願いなの?・・・・・・・

 

 

彼はうなずいた。


・・・・・・・そう、分かったわ・・・・・・・・・

光に包まれる。

 

「・・・・・・もしかして・・・・綾波?」

 

彼の意識はそこで途絶えた。
 

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2009.11.13