2th-01

 

 天を恨んではいない。

人もうらんではいない。

私にとってエヴァが全てだから。

私はこの為に生まれてきたのだから。

私はこの為に生きているのだから。

 

 

私が迷ってはいけない。

私は望んではいけない。

これが私の使命だから。

私は使徒を倒さないといけないのだから。

私がこの世界を守らなければいけないのだから。


 

だけど、碇君は・・・・・・

碇君だけは・・・・

私はそう願わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

Thank you for making a dream seen all the time

 

 

 

 

 

 ゴミ箱から拾った、碇君の持っていた機械。

 彼は、どんな気持ちでこれを捨てたのか?

 私には理解をする事が出来ないのだけれど、私の知っているのは、これは彼が父親からもらったものだと言う事。

 それを捨てると言うのは、どんな意味を持つのだろう?

 碇指令に、自分の父親に裏切られたと思ったのだろうか?

 私には理解できない感情。
 未だに複雑な感情は理解が出来ない。

 

 付いていたイヤホンを耳に当てると、音楽が聴こえた。

 何とも言いがたい感情が、心に湧き上がる。

 でも、言葉にする“すべ”を私は持っていないのだ。

 今まではそれを“悲しい”とは思わなかった。

 でも、今はそれを“悲しい”と思える。

 そんな自分に驚き、碇君に感謝した。

 彼が居なかったら、気付かなかったであろう想い。

 他の人からしたら、笑われるくらい些細な事なのだろうけれど。

 

 碇君、あなたに出会ってから、本当に色々な事を知ったの。

 楽しい、嬉しい、そして悲しい。

 食べ物を食べると美味しい事も。

 誰かと一緒の食事は楽しいって事も。

 だから、あなたに『ありがとう』って伝えたかった。

 あなたは『自分は無力』だと思っているけれど、私はあなたに感謝している。

 少なくとも、私はあなたに感謝をしている事を知っていて欲しい。

 

 そして、あなたには笑っていて欲しい。

 それが私の願いだから。 

 

 

 

 

 

 碇君を護りたい、ただ、それだけだった。

 世界がどうとか、私の使命だとか。あの瞬間、全てが消し飛んだ。

 誰でもない、碇君に生きていて欲しい。碇君の未来を残したい。だた、それだけだった。

 

 

 私が死んでも、代わりは居る。

 3人目の私が居る。

 だから、大丈夫。

 きっと、大丈夫。

 

 悩み、傷付いてしまった碇君の顔じゃなく、あの、優しい笑顔がもう一度見たかった。

 例えばそれが、私に向けられたものでなくても構わない。

 碇君が、碇君らしく笑っていられる世界であって欲しかった。

 

 私が死んでも、代わりは居るもの。

 3人目の私が居るもの。

 だから、大丈夫。

 きっと、大丈夫。

 

 ううん。

 大丈夫にしてみせる。

 

 

「ATフィールド全開。」

 私に出来ることがある。

 それが嬉しかった。

 零号機は傷付き完璧な状態ではないけど。

「碇君がもう・・・・エヴァに乗らなくていい様にする。」

 私の決意。

 他の誰でもない、私の決意。

 誰かに言われた訳じゃない、誰かに命令された訳じゃない、私の、私が決めた、意志。

 碇君に笑っていて欲しいと思った、私の願い。
 

「だから!」

 何も出来ないけど、碇君みたいに上手くエヴァは扱えないけど、私は私に出来る事をするだけ。

「逃げて!弐号機の人。ありがとう。」

 伝えられる、感謝の気持ち。

 言葉に出せば伝えられる。

 伝えたいと思えば、伝えられる。

 碇君から教わった事。

 

 

だから、大丈夫だと思った。

その瞬間まで・・・・・・・


 

 

 

 

 

 だめなの。

 もう、私は、ここでしか生きられないの。

 

 なすすべもなく、ひざを抱えて座っていた私。

 

「綾波!」


 いいの。碇君。

 私が消えても変わりは居るもの。

 

「違う!綾波は綾波しか居ない。」
 

 ・・・・・・え?

 

「だから今、助ける。」

 

 ・・・・・あ・・・・・・

 

 気配を感じて振り返る。

「綾波!」

 碇君の声。

 でも・・・・・・見えない。見えないの。

 碇君の顔が見えないの。

 でも・・・・・・・

 貴方が来てくれた、それだけで・・・・・・いい。

 

「綾波、手を!」

 伸ばされた碇君の手。

 もう、無理なの。

 もう、これで、いいの。

 もう、これで十分なの。

 

「来い!」

 さらに伸ばされる手。

 碇君、あなたが助けに来てくれて嬉しかった

 だから、それで充分。

 

 

 

 

 でも・・・・・・・・

 

 

 

 私も願って、いい?

 

 

 

 自分から伸ばした手は、摑まれ引き上げられた。

 摑まれた右手が熱い。

「綾波、父さんの事、ありがとう。」

 抱きしめられたら、泣きそうだった。

「ごめんなさい、何も出来なかった。」

「いいんだもう、これでいいんだ・・・・・・・。」

 

 ・・・・・・・・ありがとう。

あなたに逢えて嬉しかった。

 

 

 2011.11.11

 

 

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