hk-1

  

「あなたは死なないわ。私が守るもの。」

そんな事、初めて言われたんだ。



「私にはほかに何も無いもの。」

自分には・・・・・・自分にはほかに何も無いなんて、そんなこと言うなよ・・・・・・

そう言った君が哀しくて。



「じゃ、さようなら。」

別れ際にさよならなんて、悲しいこと言うなよ・・・・・・

君が消えてしまいそうだったから。



「何・・・・・泣いてるの?」

君が生きててくれて

君が消えてしまわないでくれて

純粋にうれしいと思ったんだ。




「ごめんなさい、こういう時、どんな顔をすればいいのか分からないの・・・・・・」

笑えばいいと思うよ・・・・・・

その笑顔があまりにも儚くて、

その笑顔がキレイだったから。




月明かりを頼りにふたりで歩いた。

君があまりにも儚くて、君が今にも消えてしまいそうで。

肩にかかる君の重さと、君の温もりだけが

君の生きている証の様な気がした。


あの時の君の笑顔を、僕はきっと、忘れない。


 

 

 




蝉時雨




いつもの教室で、窓の外を見るふりをして、君を見た。

紅い瞳と蒼い髪。

思ったよりも、睫毛が長い。

キレイだな・・・・・と思った。

無表情な君の笑顔を知っているのが僕だけだとしたら。





窓の外には蝉時雨。

季節の無いこの街に、季節の無いこの教室に、降り注ぐ。

いつもなら、耳障りなこの音すら心地よく感じてしまう。




僕は、君に恋をした。

君の笑顔が僕だけのものだったとしたら、

君の視線が僕に注がれたとしたら、

君のぬくもりをもう一度感じることが出来たら、

僕はどうしたらいいのだろう?



2010.11.22