リナは一人目のレイではないかとリツコさんは言う。
幸せになる事が出来なかった一人目の綾波。
そんな彼女が幸せになれるといいな、と思う。
「でも・・・・・・・・」
とリツコさんは言う。
「状態が安定してないから、何時、どうなるのか、解らないのよ。」
と、哀しそうに付け加えた。
意味が解らなかった。
もしかしたら、リナは長く生きられないかもしれないって事?
もし、そうなら・・・・・・・それは哀しい。
「リツコさん。それって・・・・・」
「私にも解らないの。」
ごめんなさい。と付け加えたリツコさんは悲しそうで、それ以上、聞く事が出来なかった。
evangelion after EOE Dream
夢の続きは?
アスカには散々バカにされた。
「本当に、なんてゆ~か・・・・情け無い?」
足は肩幅に、手は腰に。
アスカ、好きだよな。仁王立ち。
・・・・・・じゃなくって!
「あ~、もぁ、いいじゃないかっっっ。」
あの瞬間、僕が儀式の依り代にされた瞬間、僕が望めば世界征服だって可能だったそうだ。
そんな事、言われてもねぇ・・・・・
僕にそんな事が可能だと思うの?
「惣流さん、シンジ君には無理。」
って、カヲル君、フォローになってないんですが?
「五月蝿い!バカヲル!!」
アンタは黙ってなさい!!とアスカに言われ、カヲル君がシュンとする。
そんな僕らを綾波は黙って見ていた。
前よりも感情が豊かになったとはいえ、変わらずに口数は少ない。
でも、目は口ほどにモノを言ってるんですけどっっっ。
ど~せ僕は情けないですよ。
いいじゃないか。僕は平和に暮らしたいだけなんだから。
「本当にアンタって、平和主義よね・・・・・」
それって、厭味だよね?そうだよね?
「惣流さん、戦わなくって済むのはいい事だわ。」
あ・・・綾波ィィィィ
そうなんだよ!
「ハン!単に弱虫なだけじゃない。」
む・・・・・当たってるか・・・・・も・・・・・
「それは違う。」
え?
綾波?
「碇君は、戦わないんじゃない。戦いたくないの。」
「一緒じゃない!」
「違うわ!」
火花散ってますけど・・・・・・・
こんな時、僕はオロオロするばかりだ。
「惣流さん。」
僕が助けを求めたのを解ってくれたのか、カヲル君が口を挟んだ。
「何よ!」
「だからね、彼女が言いたいのはね。」
そう言って話し出した。
「シンジ君はエヴァに“乗らない”んじゃなくて“乗りたくない”んだよ。
似ているけど、違うんだ。
“乗れない”でもなく“乗らない”でもない。乗る事を拒否したんじゃない。
乗らないで、戦わないで済むなら、それが一番だと思っているって事さ。」
「っっっ!!」
アスカがそっぽを向いた。
きっと、違いを理解したんだろう。
僕は、もう、戦いたくはない。
エヴァに乗って戦わないで済むのなら、戦いたくはないんだ。
僕は平和に暮らしたいんだ。
だけど・・・・・
今ここで、使徒が現れたのなら、きっと、エヴァに乗る、と思う。
それで綾波やリナや父さんやリツコさん、アスカやカヲル君、みんなを守る事が出来るのなら、僕はエヴァに乗るよ。
でも、そうならないのが一番いいと思うんだ。
みんなが平和に暮らせるのが一番いいと思うんだ。
アスカは違うの?・・・・・・かな。
何とも言えない沈黙を破ったのは、当然のようにリナだった。
「いたぁ、シンジぃ~」
やって来たリナが僕にピタっとくっ付く。
「どどどどうしたの?」
む、胸が腕に当たってるんですけど!!!!
「だって、シンジ、いないんだもん。」
え~~~っと、綾波さん?
にらまないでくれますか?
「リナちゃん。」
カヲル君が少しだけ腰をかがめ、リナと目線を合わせて話しかける。
「どうしたの?」
「お腹すいたの。」
時計を見ると、そろそろお昼の時間。
「じゃぁ・・・・食堂、行こうか。」
未だに外に出る事の出来ない僕たちにとって、食事は楽しみのひとつでもあるのだ。
リナの手を剥がして食堂に行こうとしたら、再び腕を掴まれた。
「イヤ。シンジのご飯がいい。」
「あ~・・・・・」
そうね。そう言う事ね。
僕は冷蔵庫の中身を思い出す。
・・・・・何とかなるかな。
「じゃぁ、作るか。」
そう言って、再びリナの手を引き剥がして、部屋へ向かおうとする。
だけど、今度は綾波に引き止められた。
「碇君、手伝う。」
綾波の言葉に、アスカが露骨にいやそうな顔をする。
嫌なら食べに来なきゃいいのに・・・・・
そう思えるくらいには、なった。
口には出せないけど。
あ・・・・顔にはでたかも。
「ありがと、綾波。」
だから、綾波には笑顔で言った。
そうすると、綾波の顔にもわずかな微笑み。
よくよく見ていないと解らないかもしれないけど、でも、今、確かに微笑った。
何だか、嬉しい。
綾波を促して部屋を出ようとすると、リナに服を引っ張られた。
「リナも行く。」
リナは僕が綾波と二人で話していると、必ず割って入ってくる。
「リナちゃんは僕と行こうね。」
カヲル君、保父さんみたいだな。
でも、ありがとう。
リナがいると、手早く作る事は出来ないから。
「やだ、リナもシンジと行く。」
「ん~でもね、シンジ君、リナちゃんと遊んでたら、ご飯作れないよ?」
「・・・・・・・・わかった。」
どうやら、空腹が勝った模様。
リナの機嫌が変わらないうちに、早く行かなくちゃ。
「じゃ、綾波、行こう。」
そう言って僕は、決死の覚悟で綾波と手をつないだ。
2010.04.24