Dr.赤木の苦悩

エントリーウラグから出てきたのは、遠い昔会ったことのある、記憶の底に封印した人。

私がもっとも会いたくない、彼がもっとも逢いたかった人。

 

 

         ユイ  

 

 

その時、私はかなり動揺していたと思う。

でも・・・・・彼女に

「幸せになりましょう」

と言われ・・・・・・

 

屈辱に感じるかと思っていたのに、負けを感じた。

 


絶対的な母性を感じさせる彼女に、負けを感じた。

 

 


私は母にはなれそうもないし。

 

母性などもってはいないし。

 

 

それよりも、何よりも

 


私の手は汚れてしまっているもの。

 

こんなに汚れてしまっているんだもの。

 

 

 

 

   赤木リツコの苦悩  

 

 

 

 

 


こんなシーン、見たくなんてなかった。

 

自分が愛してた男と、私じゃない別の女のラヴシーンなんて。

 

 


     
愛してた?

 

 


過去形なの?

過去形になってしまったの?

ま、あんなの見せ付けられちゃ・・・ね。

なんとなく・・・・・なんとなく・・・・解かった気がした。

 

 

私は彼に『父親』を感じていたのかもしれない。

 

そして・・・・・

母が望んで手に入れることの出来なかった男を手にすることで、母に勝とうとしていたのかもしれない。

 

元々が一時の激情に流されているだけな気もしてたし。

寂しさを誤魔化しているだけな気もしていたし。

 

その激情が流れてしまった今、残るのは・・・・空しさか・・・・・。

 

 


全く・・・・・イヤになるわ。

 

こんなに冷静に自分を分析できるなんて。

 


ロジックじゃないもの・・・・・・


タバコの吸殻の山を築きながら、思い出すのは・・・・・さっきの事。

 

 

 


「リッちゃん、こめんなさい。
色々とごめんなさい。」

泣きそうな顔でユイさんは謝った。

「・・・・・・何の事でしょう?」

この人は知っている。そう感じた。

知っていて尚、謝っているんだ。

「ここじゃ話せないわよね。後でゆっくり話しましょう?」

「・・・・・・・・・・」

ユイさんが悲しそうな顔で私を見ていた。

私は白衣を持ったままなのに気付いた。

 

 

 


私とした事が・・・・・

 

 

今日は動揺しっぱなしだわ。慌てて白衣を渡した。

 

ありがとう・・・・そう言ってユイさんは白衣を受け取ると、エントリープラグの中で着込んだ。

 

そして、私の目をしっかりと見据える。

 

「でもね、これだけは言いたいの。

私はみんなが幸せになる為に還ってきたの。

だから、幸せになりましょう!」

そう言うとユイさんはにっこりと微笑った。

 

その瞬間、私は『負けた』と感じた。

 

すべてを知って、なお、赦そうとする彼女に負けを感じた。

 

 

「ユイ!」

碇指令の声がした。

肩で息をし、かなりあせった顔をして、私の後ろに立っていた。


こんなにそばに来るまで気付かなかったなんて・・・・・ 

 

こんなにも動揺している自分が、やけにおかしかった。

 

「待機している医療班を呼んできます。」

私はその場を後にした。

二人で話したい事だてあるだろうし。

 

・・・・・こんな時に、こんな風に気を使う自分に嫌気がさした。

 

 

 

結局私って、何なんだろう?

 

 

 

 

扉を開ける前に、振り返って確認した。

ユイさんはエントリープラグから出ていた。

扉を開けて、待機中の医療班を入れた。

シンジ君は指令自らエントリープラグの中から出されていた。

背の高い指令が抱き上げたシンジ君は、とても小さく見えた。

同世代の子供と比べても決して大きくない、むしろ、小さく華奢な彼を見て、改めて自分の罪の大きさを感じた。

 

こんな子供を戦わせてるんだ・・・・・

 

どんな大義名分があろうとも、決して赦されることの無い罪。

自分の罪深さを痛感した。

 

 


こんな私が幸せになっていい訳が無い。

 

 

 

指令は医療班の持ってきていたストレッチャーにシンジ君を乗せた。

まるで、壊れ物でも扱うかのように、そうっと寝かした。

 

医師がシンジ君の様態の確認をする。

脈を取り、心音を聞き・・・・・

 

「生存は確認されました。詳しくは、精密検査をいたします。」

 

緊張が和らいだ気がした。

 

色々と問題は山積みであっても、シンジ君は無事なのだ。

「指令・・・」

「あぁ・・・・皆に伝えてくれ。詳しい事は後日話す。」

「解りました。」

碇指令とユイさんはシンジ君に付き添って行った。

その姿は長年連れ添った夫婦以外の何者でもない、他人の入る余地の無さを感じさせた。

 

仕方ない・・・・・

 

私はマイクを手にした。

 

「シンジ君は生きています。

詳しい事は精密検査をしてみないと分らないですが、生存は確認されました。

後日、改めて碇指令からお話があります。

それまで、この事は他言しないように。以上です。」

そして私は自分の部屋に帰る。

 

泣いてすがれたら、手に入れられるの?

 

でも、それは私のプライドが許さない。

 

指令は知ってたのかしら?

 

 


ズルイ人・・・・・・・・・

 

 

 

 


でも・・・・・あの時の、あの気持ちは本物だった。

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日、ユイさんは私の所に来た。

私の研究室。

ここならば、盗聴されるおそれはない。

彼女は知っているのだろうか?

 

「リッちゃん、ごめんなさい。」

ユイさんはそう言って頭を下げた。

「私、知っているの。あの人があなたに何をしたのか。」

 

やっぱり・・・・知っていたんだ。 

 

でも・・・もう、どうでもいい・・・・

 

何だか、疲れた。

 

「ごめんなさい。」

ユイさんは深々と頭を下げた。

そして、

「自己満足ね。」

と寂しそうに笑った。

「そんな事・・・・・・ないです。

 私の方こそ申し訳ありません。」

法律的に言えば、私は悪者になる訳だし。ま、その場合は指令は捕まるだろうけど。

「ま、悪いのはゲンドウさんよね。

きっちり責任は取らせるわ。」

「そ・・・そんな・・・・」

もう、どうでもよくなってしまったんです。

あんな姿見せられて、夢や希望が持てるほど、子供じゃないんです。

あくまでも、『大人の関係』でいたいんです。

「それとも、熨斗つけて差し上げましょうか?」

 

      ・・・・・・・・いらね・・・・・・・・・・

 

心の底からそう思った。

 

「シンジとレイちゃんを引き取って、3人で暮らす事にしたわ。」

明らかにユイさんは話をそらした。

「指令は一緒じゃないんですか?」

「シンジが赦さないでしょ?」

そうかもしれない・・・・・・・

「シンジが目覚めて、確認を取らないと解らないけど、私はそうしたいの。」

「アスカは・・・いいんですか?」

ふと、言葉に出た。

チルドレンは3人。アスカだけは引き取らないのは何故?

「アスカちゃん?

 だって、自分の息子を下僕のようにしてたのよ?

 そんな子を許せる程、私、人間で来ていないわ。」

気のせいか、口がとんがっている気がする。

なんか、マヤみいたいだわ。

そのギャップが妙におかしかった。

「まぁ・・・・・そうでしょうが・・・・」

「アスカちゃんの責任は、育てたドイツ支部の責任でしょ?

 本部の責任ではないわ。」

ドイツ支部の責任・・・・・・・・か。

そして、キョウコ・ツェッペリン博士の責任でもある・・・・と。

確かに幼児期に無条件で愛されて育ったのか?と聞かれれば疑問に思ってしまうわね。

「でも・・・・・・」

だから・・・レイなのね。

「ま、本人次第かしら?

 アスカちゃんが礼を尽くせば、こちらも礼を尽くす。それだけよ。

 自分がどれだけ我が儘をを言っているのか?

 自分がどれだけ周りの人に助けられているのか?

 本人が気付かなきゃ、どうしようもないんじゃない?」

確かにその通りだと思った。

 

 

アスカは人に感謝をしない。


自分に向けられた厚意を当たり前だと受け止める。


じゃあ、レイは本部の・・・・・私の責任ね。


「でも、指令を赦しましたね。」

「うふふ・・・そう思う?」

「はい。」

「女としてはやっぱり嬉しいもの。

 世界中を敵にまわしても君だけは!!

 ってやつをされちゃぁねぇ・・・」

その通りだわ。

「でも・・・・・

 女としては赦せても、妻として・・・・と言うより、母親として、人間としては赦せないのよ。

 だから、ジンジがあの人を赦す事ができたら、私も赦そうと思うの。」

 

 

 

 

 

 

 

 


ユイさんとの話の後、私は司令室にいた。

こんな形で来るとは思わなかった。

「赤木君、本当に申し訳ない。」

・・・・・・・謝罪された。

この人が、人に頭を下げるのを初めて見た気がする。

「いえ。もう、いいんです。」

と言うより、放っておいて欲しい。

もう、どうでもいいんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつのも様に、いつものごとく、ミサトは突然やって来た。

今日は何て日だろう?

全く自分の仕事が出来ないじゃない!

 

この人、本当に仕事をしているの?

 

きっと、今頃は日向君が泣いてるわね・・・・・

「ねぇリツコ。

 何でユイさんは・・・・」

コーヒーを片手に話しかけるミサト。

あぁ・・・、ユイさんに会ったのね。

「ユイさんに何を言われたの?」

「さっき、廊下ですれちがったのよ。

 そしたら、呼び止られて『シンジとレイちゃんと3人で暮らします。』って言われたわ。」

あぁ・・・その事ね。

ユイさんがシンジ君とレイと暮らす事が納得できないって?

親がいるんだから、親と暮らすのは当たり前だと思うんだけど?

ま、シンジ君は未だに目を覚まさない訳だし、すべては彼が目覚めてからなんだけど・・・・

「ジンジ君の事は解るわ。息子なんだし。

 でも、レイは?何でレイだけなの?」

そんなにシンジ君とレイが一緒に暮らすのが嫌なの?

 

違うわね。

シンジ君がいなくなるのが嫌なのね。

「何でアスカは放っておくのよ!!!」

建前・・・・・ね。

素直に言えばいいのに。

だって、本心は違うでしょ?

家事全般をシンジ君に依存していたから、今後の事が心配なんでしょ?

今まで同様の生活が送れなくなる事が嫌なんでしょ?

それと、最近荒れているアスカのフォローもめんどくさいと。

 

あぁ・・・・こんな時にも冷静に分析してる。


「ミサト」

自分でも冷たい声になっているのが分かる。

これ以上、私にどうしろって言うの?

あなたは知らないけど、私は昨日大切にしていたものを失ったのよ。

それなのにあなたは自分の事ばかり。

言っていない私も悪いんだけど。

でも、あなたの偽善を語れるほど、今は気持ちに余裕が無いの。

「あなた、自分が何を言っているのか解ってる?」

「へ?」

「あなた、自分が『する』って言ったんでしょ?その為に『お金』だってもらってるんでしょ?

 仕事なんだから、キチンとしなさい!!」

「な・・・・・何よリツコ。

 私が何もしていないとでも言いたいの!?」

あれで、していたの?

しているつもりだったの?

だったら、私はあなたが理解できない。

「している? 本当に?」

一瞬、ミサトがひるんだ。

自覚はあるんだ。

 

ま、私だって、レイを八つ当たりの対象にしてしまったのだから、同様か。

 

いえ、違うわ。

 

私は事実を認め、ミサトは事実を認めない。

似ているようで、全く違う。

「仕事の邪魔よ。帰ってくれる?」

私はミサトを追い出した。

ユイさんってば、手回しのよい事。

 

 

 

 

 

 

 


「ねぇ・・・リッちゃん。

 お願いがあるんだけど・・・・」

短い間ではあるが、ユイさんの性格が解りつつある。

ユイさん・・・・・・

私はこれからミサトのフォローをしなくちゃいけないんです。

あなたがそれを望んで、私もミサトと一緒に執務室によんだんでしょ?

あんな遠まわしに『あなたは無能だ』と言われても、ミサトは理解してないと思うんです。

ミサトは、自分は有能だと思ってるんですよ?

だから、彼女の解釈は『子供たちは自分以上に有能』なんですよ。

それを解ってますか?

それをわかった上での行動ですよね?

彼女の性格、解ってるんだったら、もっとストレートに言わないと・・・・・・・

きっと、それでも、理解なんてしやしないんですよ。

だから、それだけで、手一杯です。

ミサトが納得するとは思えないんです。

時間がかかるんです。

出来ればしたくはないんです。

はっきり言って、めんどくさいんです。

でも、あなたはそれを欲求してるんです。

第一、今までに受けた仕事で手一杯なんですよ。

 

前回は何でしたっけ?

あぁ・・・・・エヴァの新しい武器ね。

これは後日、チルドレンがレポートを提出するんでしたっけ?

 

その前は・・・・・

え~~っと、指紋と静脈で認識、起動する携帯用の末端でしたっけ?

 

その前は・・・・・・

 

 

 

 

 


覚えていないわ・・・・・・あり過ぎて・・・・

 

 


思わずこめかみに手が、いってしまう。

もはや諦め・・・・・の領域・・・・か。

 

「今度は何ですか?」

無言の抵抗の後、放った声は思った以上に冷たくなってしまった。

「私ね、鈴原君に会って、足は元通りにするって約束しちゃったの。」

私の冷たい声をものともせずにユイさんは言った。

「ねっ、ねっ、お・ね・が・い

ユイさんは、手を合わせた。

きっと、語尾にはハートマークもついている事だろう。

 

全くこの人は、、、、、

ミサトよりも始末が悪い。

自分が何をしているのか、人が何が出来るのかをちゃんと解ってるんだもの。

天然なのか?

計算なのか?

 

・・・・・・・・天然だろう・・・・・・・

 

そう思おう。それが一番だわ。

これ以上、頭痛の種を増やしたくはない。

 

「今すぐは無理ですよ!」

 

「ありがとおぉぉぉぉおおぉ ♥  ♥  ♥

リッちゃん大好きよ!と私は抱きつかれた・・・・

 

レベルマヤ?

 

私は激しく頭痛が痛かった。。。。。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

会議の支度を抜け出して、私は、ユイさんの執務室に急いだ。

 

作戦課の会議?

 

それよりも大切なことがある。

それを間違えてはいけない。

 


走り出したくなる気持ちを抑える事が出来ずにいる私を、周りの人は不思議そうに見ていた。

「ユイさん!!!」

ノックもせずにドアを開けると、そこには肩を押さえる加持君と、立ち尽くすユイさんがいた。

「リッちゃん・・・・・」

ユイさんはぎこちなく笑った。

「初めて、人、撃っちゃった。

 ・・・・・・・と言うより、初めて銃なんて持ったわ。」

ユイさんの言葉に、加持君が引きつるのが分かる。

 

よくも、まぁ、無事で・・・・・

 

用意してあった医療キットをだし、傷の確認をして、形ばかりの麻酔をする。

至近距離で撃ったせいか、弾は貫通していた。

チップを埋め込み、傷口を縫った。

 

かなり痛いはずなのに、加持君は声をださなかった。

 

それを確認したユイさんは部屋をでた。

残された加持君に私は末端の使い方の説明と、指紋の登録をする。

準備が終わると、予め用意してあった服に加持君は着替えた。

 

「じゃ、リッちゃん、また!」

笑顔で出て行く加持君の背中に声をかける。

「早く帰ってらっしゃいよ。

 彼女のお守りはもうしないから。」

「了解!」

ヒラヒラと手を振って、加持君は行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


作戦課との会議は始まっていた。

 

どうやら、現在稼動可能な追撃システムについての確認が終わったところらしい。

 

「今まで、このシステムは、全くといっていいくらいに活用されていません。」

ユイさんの言葉に、うつむく課員。

でも、ミサトだけは違っていた。

「今後は戦術レベルでなく、戦略レベルでの作戦の立案を希望します。」

「どう言う事ですか!?」

「言葉の通りよ。葛城三佐。」

にらみ付ける様なミサトの視線に負けることなく、ユイさんは平然としていた。

「チルドレンも場数を踏んできているわ。

 実際に、エヴァの稼動方法なんかは彼らの方が詳しいんじゃないかしら?」

何人かの課員はうなづいていた。

その通りかもしれない。

実際に動かしているのといないのでは、絶対的に違いはある。

「だから、戦略レベルなのよ。

 戦っている最中に、色々と言われたら、とっさの判断に迷いが出る。」

「でも!!!」

使徒を自分の手で倒す事を望むミサトには納得できないのだろうか?

   ・・・・・戦術と戦略の違い、理解してるわよね?

「でも、何です?

 勘違いしないでください。この課は『作戦課』です。

 作戦立案が主な仕事だと思いますが?」

ミサトは答えられなかった。

「私たちは、戦う事が出来ない大人の代わりに子供たちを戦わせています。

 この事を理解し、心に刻んでください。

 そして、戦う事の出来ない私たちは、最大限に子供たちのフォローをしなければいけないのです。」

ユイさんは言葉を切って、課員を見渡した。

何人かはうなずき、そして反省している人もいるようだった。

「その為の『戦略レベルでの作戦立案』になる訳です。」

そういう事ね。

今まで全くといっていいほど、作戦らしい作戦はなかったもの。

フォローする事すら考えていなかった人もいたかもしれないわね。

 

ユイさんの言う所の『エヴァへの過信と依存』 なのかしら?

 

確かに、ATフィールドがある使徒には勝てないかもしれない。

でも、威嚇や牽制ならば可能だろう。

その事は考えなかったのだろうか?

不思議に思ったのと同時に、ミサトの力量への疑問が残った。

「それと・・・」

「続きは私が話そう。」

ユイさんの言葉を遮って、指令が話し出した。

「現在、チルドレンは4名。そして、稼動しているエヴァは3体。

 今後の事を考えて、チルドレンを特務准尉とし、正式に軍属にしようかと考えている。

 そして、エヴァンゲリオン独立小隊として発言権も与えようかと思っている。」

どよめきが起こった。

でも・・・・・言われてみれば、その通りよね。

彼らには、そういったものは全く無かったのだから。

 

たかが子供。されど特別な子供。

 

って所かしら?

そういえばシンジ君が

「父さんに『死にたくなければ勉強しろ』って言われたんです。」

って言ってたわね。

指令はこれを見越してたのね。

「この件に関しては、決定ではない。

 ここにいる者には考えておいて欲しいのだ。」

 

 

 

会議は終わった。

思案顔の人の対し、ミサトは不機嫌そうだった。

確かにね。

ま、触らぬ神にたたりなしって事で。

後で来るんでしょうね・・・・・・きっと。

 

 

 


 

 

 

 

 

「ねぁ・・・リッちゃん?」

ユイさんは満面の笑みで私を覗き込んだ。


嫌な予感がする。


大体こんな時は、お願いされるのだ。

ここの所、彼女に振り回されっぱなしで自分の感情の制御がついていない。

10日もたっていないのに、昔からの友人のようになっている。

どうも、基本的に私は人の尻拭い的な役割になるらしい。

ミサトがいい例よね・・・・・

「で?今度は何です?」

不機嫌さを隠さずに私は言った。

「あのね・・・・・

 MAGIのミニチュア作りたいんだけど・・・・」

「はぁぁぁぁぁぁあぁ????」

「理論は出来ているんだし、スペック的には問題ないわよね?」

「そう言う問題じゃないでしょう?」

「規模は百分の一って事で・・・それとも、千分の一?」

ええぇえぇぇい、人の話を聞け!!!

「MAGIの、子機にしたいのよ。」

え?

「使徒をすべて倒したら、ゼーレは本部の武力制圧をしてくる可能性もあるわ。 

 そうしたら、MAGIだってハッキングされる。 

 プロテクトをかけてしのいだとしても、外部との連絡は取れなくなる。

 そうしたら、困るじゃない?」

確かにそその通りである。

思わず頭の中でシュミレーションしてしまう。

「だから、そんな時に別回路で外と繋がっていたら?」

ふむふむ。

理屈では解りますよ、ユイさん。

「あてはあるの。

 まず、リッちゃんと、ゲンドウさんと私。

 この3人で1つ。」

やっぱり私なのね・・・・・

「で、もう1つがレイちゃんとシンジと・・・・・・
 あと一人は内緒 ♥ 

「ユイさん!!!」

「ゴメンナサイ。 でも、まだ、彼には確認を取っていないのよ。」

と言う事は・・・・他の人には確認を取ったって事?

「私に内緒で何をやってるんですか!!!」

「え~~~~っと、話したのはゲンドウさんだけよ。

 シンジもレイちゃんも、協力してくれると思うし。」

そんなに怒らなくても・・・と、顔に書いてありますよ、ユイさん。

「それと・・・・・・・」

ユイさんはおかしそうに続けた。

「ミサトちゃんとアスカちゃんと鈴原君でもう1つ作る?

 かなり面白いのが出来ると思うわ。」

「た・・・確かに。」

この3人だと果てしなく好戦的で挑戦的で暴力的でとんでもなく暴走しそうなものが出来上がってしまうわね。

「ま、それは冗談として・・・・・・

 予算は10億。 これは私の自腹ね。」

「え?」

「それ位、持ってたりするんだなぁ・・・・・・。」

ユイさんはいたずらっぽく笑った。

なんだか、かわいい・・・・。

 

シンジ君って、顔はユイさんに似てるけど、性格は指令よね。

本人は気付いてないけど。

 

「出来上がったら、持って帰るから大きくしないでね。♥  ♥ 

語尾にハートが3つ位ついてますね。

本気で持って帰るんですか?

(いや、持って帰るだろう・・・・この人なら)

「・・・・・・・・準備します。」

必要性が理解できてしまっている以上、断る事の出来ない自分が恨めしい。

「じゃ、よろしくぅ!!!」


ユイさんは実ににこやかにその場を去った・・・・・・・・

 

 

初: 2009.05.14  (オヤジの青春)

2009.11.29  改定  

 

 


  あとがき  言う名のタワゴト

 

EVAのキャラで誰が好きか?と聞かれたら、

「リツコさん!!!」

と元気に答えるナナミです。楽しんでいただけましたでしょうか?

さて、前回も書きましたが、有能が故に、人の尻拭いをしてそうな彼女が大好きです。

と、同時に、主要キャラの中で『唯一の大人な人』であると思います。

 

罪を罪として認め、愛する男の為に重ねた罪の重さに耐え切れず壊れていく彼女。同じ女として、とても共感できるのですが、私は葛城ミサトのタイプだそうな・・・・・・・。(マジで言われた・・・・)


そして・・・・・本文中にある

    頭痛が痛かった

は誤字じゃないです。(念の為)